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学会概要GREETING
理事長挨拶
一般社団法人 日本ウイルス療法学会 理事長
東京大学医科学研究所 教授
藤堂 具紀
ご挨拶
がん治療は近年大きく発展を遂げています。しかし、生存期間が延長し5年生存率が改善を続ける一方で、がんによる死亡率は増加の一途を辿っております。高齢化に伴うがん患者の増加が根底にある中で、早期発見によるがんの全摘出例を除くと、残存や進行したがんの治癒率は伸び悩んでおり、更なる改善が必要です。
ウイルス療法は、がん細胞で増えるウイルスを用いたがんの新しい治療法です。がんの標準治療を根本から変える可能性がある革新的な治療法として期待されており、世界でさまざまなウイルスを用いたウイルス療法開発が加速しています。我が国では2021年6月に、国産のウイルス療法薬が初めて、悪性神経膠腫(脳腫瘍)を適応症として製造販売承認され、同年11月より販売開始となりました。先進国で承認された2つめのウイルス療法薬です。日本発のウイルス療法薬は他にも数多く臨床開発が進行中です。手術以外の標準治療は、これまで放射線治療と薬物療法に限られてきましたが、実用化に伴い、ウイルス療法が標準的ながん治療として用いられようになるのも、遠い先ではありません。
今後は、放射線治療と薬物療法に並ぶがん治療の新しいアプローチとして、がん治療用ウイルスを用いるウイルス療法が飛躍的に発展すると予想され、近い将来、がん治療の一ジャンルとなることが確実視されます。学術的にも、臨床と基礎の双方に渡って、ウイルス療法の知見や研究が加速的に進むと想定され、分野の垣根を越えて叡智を結集し、情報交換を行うことは、我が国のみならず世界のウイルス療法の発展と普及に寄与すると思われます。
本来病気を起こすウイルスを味方として活用するという新技術ですので、一般社会への普及・啓蒙活動も重要です。また、我が国はウイルス療法の最先端技術を有していますが、医薬品開発は欧米に遅れを取っています。革新的医療技術がアカデミアから生まれている世界趨勢の中、ウイルス療法の臨床開発が促進される臨床・研究体制や制度改革の議論、提言なども必要です。
一般社団法人 日本ウイルス療法学会は、世界初めてのウイルス療法の専門学会として2022年10月に発足しました。学問の発展のみならず、この新しい治療モダリティを全ての希望するがん患者に届けるべく、学・産・官・国民で連携して、迅速かつ円滑な社会実装と普及に力を注ぎます。ウイルス療法の研究、技術開発、応用および実践を通じてがん医療の発展に貢献し、我が国と世界の健康と福祉に寄与することを目指します。
2023年2月